標本:動物・植物・鉱物などで、その種類の物の有様を示すために採集した実物のみほん。
goo辞書より
「 人間を標本にする 」という
かなりサイコパスな内容だが、
真実は守りたい人を思う気持ちが
サイコパスな犯罪へ駆り立ててしまう
誰も救われないストーリー。
ネタバレ
序盤から標本にされた人間の○体が
6体、イラストもついて紹介される。
人(特に少年少女)を見ると
蝶々に見えてしまう感覚の「 榊史郎 (さかきしろう)」
彼が行った人間を標本にする猟奇○人の内容が
蝶の標本作品として鮮明に描かれている。
かなりサイコパスな内容だが、
真実は「 榊史郎 」は
6人を標本にした訳ではなく、
標本にしたのは、
息子の「 榊至(いたる) 」ただ1人だけだった。
息子の「 至 」が猟奇○人を犯したと知り、
自分がその罪を被るべく、
息子を含む6人全員を○したように見せかけ、
全ての罪を被った。
最終章、
標本にした人物は「 至 」の知人である
「一ノ瀬杏奈」が行っていたこと、
さらに「 至 」が「 杏奈 」を手伝っていただけだと知る。
その「 杏奈 」も実母で芸術家の「 留美 」の指示により、
人間を標本にしてしまったという
真実を知ることになる「 史郎 」。
息子を信じ切れなかったやるせなさ、
あまりのグロテクス表現から一変して、
息子への深い愛情と
息子を信じ切れず、
○害した後悔が押し迫る終盤は
胸を締め付けられる想いだった。
感想
「 湊かなえ 」の作品でおすすめは?
と聞かれれば、
私は即答でデビュー作「 告白 」と答えている。
今回の「 人間標本 」は
デビューから15年の書き下ろし作品で
長年数々の作品を世に送り出してきた
大ベテラン作家だが、
裏を返せば「 デビュー作以外は微妙 」
という感想だった。
しかし、
「 人間標本 」は人の心理描写を丁寧に描き、
読者を誘導している。
そのため初見で読者が予想や考察では
辿り着けない結末に仕上がっている。
読後は
息子を手にかけた「 史郎 」の切なさが見事に描かれ
胸が苦しくなる誰も救われない物語。
今後「 湊かなえ 」作品のおすすめは?
と聞かれれば
間違いなく「 人間標本 」と答えるだろう。
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