シニア世代を主人公にした小説の第四弾。
主人公「 原英太 」の終活により
周囲も影響されていく。
時には相手に勇気を与え、
時に眠れぬ獅子を起こす。
残り時間が少ないからこその心理描写は圧巻。
笑いあり、恐怖ありでも最後には少しホッとする。
全八章をそれぞれ独自にタイトルをつけてご紹介。
第一章 終活と母の思い
終活を妻の「 原礼子 」に勧められ
渋々エンディングノートを強要される夫「 英太 」、
イヤイヤ勧められていたが、
母の○をきっかけに終活に対する思いに変化が訪れる。
第二章 60年前の後始末
「 英太 」にとって唯一の心残りである「 向山あかね 」。
彼女に高校生の時の悪戯を謝罪するため
薄氷を踏むかのような当てを頼りに行動する。
第三章 過去の思い出と現在の心情
全然覚えてもいない過去を掘り起こされ迷惑がる「あかね」、
自身の気持ちにケリをつけたいがために行動する「英太」。
お互いの気持ちにすれ違いが生まれたまま
二人は再会する。
第四章 同居の苦悩と現実の直視
会いたくない「 あかね 」は
友人の「 日出子 」に同行を願い出る。
「 英太 」と顔見知りということで、3人での再会となる。
3人での再会に戸惑いつつ、
「 あかね 」との再会に喜ぶ「 英太 」。
しかし自身の思い出の補完で
「 あかね 」が美化されすぎていたことに気づく「 英太 」。
再会の場は「 あかね 」の嫁に対する愚痴の吐け口場となる。
第五章 逆襲と人生の華
嫁の「 加代 」にいじめられ、
いつか仕返しを考えている「あかね」。
完全に除け者扱いされ、
息子も頼りにならないとわかり、
ついに「 加代 」が最も嫌がる行動に出る。
何食わぬ顔で再会していた「 日出子 」
実は「 英太 」と過去に不倫していた。
40年前の淡い記憶が少しだけ蘇る。
第六章 意地悪の応酬
寄り添うことのない「 あかね 」と「 加代 」。
自分が有利になるかだけを考えた行動をする二人。
二人の溝が修復不可能になり、
相手を貶める言葉の応酬を重ねる。
第七章 それぞれの終活
「 英太 」の終活は、
「 日出子 」の過去も掘り起こす。
「 日出子 」は人生のケリをつけるため、
「 英太 」の妻「 礼子 」に会いにゆく。
不倫した者とされた者、
初対面でありながら、
「 英太 」と「 日出子 」の関係を察する「 礼子 」。
一触即発の対面は、
「 礼子 」の終活への思いを完成させる。
第八章 人生は期限付き
残り時間の少ない者たち。
それぞれ終わりの時を迎えるまで
悔いのない行動をとる決意をする。
感想
「 英太 」の終活が周囲に様々な影響を与え、
意外性だらけの内容で大満足。
人の本性を描写しながら、
現実にしている会話は穏やかと
本音と建前の恐ろしさを痛感させられる。
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