全5章の短編集。
全ての章が日常に潜む
ちょっとした失敗や悪事がきっかけとなっている。
失敗や悪事を隠そうと
小細工をするが全てが裏目に出る。
気がつけば逃げ場がなくなり、
追い込まれる気持ち悪さが襲ってくる。
ただ、運が悪かっただけ
過去に自分の行いで
取引先の人が○んでしまったと思い込み、
心に影を背負いながら生きていた男。
病気により残された時間の少ない妻「 十和子 」に思いを打ち明け。
自身の贖罪をし始める。
しかし、察しの良い「 十和子 」は
夫の犯したと思える罪の告白から
夫の潔白と物語の真相を推理する。
全ては終わったこと、
予想や願望でしかない内容が
夫婦の救いになる。
埋め合わせ
プールの水を誤って捨ててしまった教師。
報告すれば叱責だけで済むことを、
何とか逃げてしまおうと画策する。
シンプルプランが積み重なり、
自体を悪化させていく。
気づけば取り返しのつかない場所にいる気持ち悪さ。
浅はかさと稚拙さが際立つ内容が、
身近過ぎて気持ち悪い。
忘却
アパートの隣人が○体で発見された。
独居老人でさらに同世代ということもあり
何かと親切にしてもらっていた。
親切の裏側にある闇と
配偶者に迫る認知症の足音が絶望感を煽ってくる。
自分の将来に希望がないと感じさせる内容だった。
お蔵入り
有名俳優に○物疑惑。
映画監督である男は
次の作品などという期待も無いまま、
現在の映画に全てをかけていた。
有名俳優を問い詰めると開き直る。
逆上した監督は誤ってその男を○害してしまう。
同じ部屋にいた者達と口裏を合わせ、
自身への容疑を逸らすために画策する。
思わぬ事態が自身の首を絞め、
自分の行いが最終的に
自分が犯人だと決定づけさせる。
ミモザ
学生時代にアルバイト先で出会った男性と不倫。
9年後料理研究家として売れっ子になった女は、
サイン会で男と再会する。
男に「 二人で会いたい 」と手紙を渡され、
若かりし日々に経験した危うさが
再びフツフツと燃え広がろうとしている。
夫がいても会う女。
会ったことがきっかけで、
地位や立場を悪化させ、
取り返しのつかない事態に発展する。
感想
日常で起こるさまざまなトラブルや失敗は
大半が謝ったり、
きちんとした対策を立てれば問題なく
解決ができる。
しかし、少しでも隠そうと浅はかな小細工をすれば
より事態が悪くなることを本人は知らない。
作中にある
「 悪いことをしたから悪いことが起きるわけではない 」
このセリフはこの著書の革新に迫る言葉だと思う。
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